2017年2月5日日曜日

第19号発行

季刊同人誌「晶」の第19号を発行致しました。目次は以下です。

同人俳句作品…………………………………………………… 1
本号の作品から  長嶺千晶…… 18

特別作品
「茫々」寺島民子…… 20





祝 俳人協会新会員競泳
「吉報」   一柳はるみ……22
「秋の蝶鮫と」清水睦子
「胸突板」  海野弘子

浅田和枝さんの俳句ノート所感 海野弘子……25


気になる俳人-10 最終回
師と死と詩 大西 朋……26
-満田春日-

工ッセイ・評論
連載「南からの贈り物(8)南の島の雪」北川清子……28
連載「季語でめぐる古典(1)菫」嶋澤眞理……30

中村草田男を想う
「来る年の足音」金崎雅野……34
中村草田男『火の島』研究
「難解ということ(2)」長嶺千晶……38


「晶」四周年記念吟行会
殿ケ谷戸庭園 日下部暁美……42
初雪の殿ケ谷戸庭園と初参加の句会 川面忠男

清風晶々 長嶺千晶……44
「晶」会員の消息

2015年2月5日木曜日

第11号発行

季刊同人誌「晶」の第11号を発行致しました。目次は以下です。



●特別寄稿
過程をさらすこと──
香西照雄への関心   堀本 吟……1

同人俳句作品…………………………7

●気になる俳人─2
照井 翠の俳句
「月の輝く釜石にて」 海野弘子……21
本号の作品から    長嶺千晶……22
鈴蘭句会発足の記   志村礼子……24

●エッセイ
八戒のつぶやき(10)
信州の風土      峯岸八戒……26

●評論
中村草田男を想う
月に想う       金崎雅野……28
中村草田男研究『火の島』の
改題にあたり     長嶺千晶……32

●エッセイ(最終回)
イスラエル紀行(5) 長嶺千晶……34

●吟行録
「草田男の句碑に集う」北川清子……40

清風晶々       長嶺千晶……44

2014年11月5日水曜日

第10号発行

 季刊同人誌「晶」の第10号を発行致しました。目次は以下です。


●特別寄稿
ポスト造型論についての覚書   宇井十間……1

●同人俳句作品
大阿蘇       長嶺千晶……5
茅の輪くぐる    清水睦子……6
晩夏から初秋    菅原久子……7
齢         永汐之恭……8
母の寝顔      峯岸八戒……9
弱気な日      一柳はるみ…10
新宿        海野弘子……11
落蝉        小川雪魚……12
まるめろ      金崎雅野……13
白き朝       北川清子……14
山笑ふ       小村一幸……15

本号の作品から   長嶺千晶……16

●気になる俳人…1
山本左門の俳句
「空白を満たすもの」   朝吹英和……18

●エッセイ
八戒のつぶやき(9)
なみえ焼きそば   峯岸八戒……20

●メルヘン
「トラ猫と僕」   金崎雅野……22

●評論
香西照雄著『中村草田男』の検証(10)
『火の島』時代の草田男の動向  長嶺千晶……26

●エッセイ
イスラエル紀行(4)   長嶺千晶……29

●吟行録
「熊本を訪ねて」   北川清子……34

清風晶々   長嶺千晶……36

2014年8月8日金曜日

スピカに紹介記事

神野紗希さんのスピカに第9号の紹介記事が掲載されました。ありがとうございます。

2014年8月5日火曜日

第9号発行

 季刊同人誌「晶」の第9号を発行致しました。目次は以下です。

●評論
中村草田男を想う
薔薇の輝く季節に  金崎雅野……1

香西照雄著『中村草田男』の検証(9)
『火の島』に見る虚子選の巻頭句  長嶺千晶……5

●特別寄稿
「エスペラントの夢」  上田信治…10

●エッセイ
パチンコ  峯岸八戒……14

●同人俳句作品
直幹      長嶺千晶……16
柏餅      小村一幸……17
春の色     清水睦子……18
春から立夏   菅原久子……19
一瞬      永汐之恭……20
握手の君     峯岸八戒……21
梅東風     一柳はるみ…22
主旋律     海野弘子……23
朧夜      小川雪魚……24
素足に下駄   金崎雅野……25
桐の花     北川清子……26

本号の作品から  長嶺千晶……27

●エッセイ
イスラエル紀行(3)  長嶺千晶……29

「第十回彩の国秩父俳句大会」に出席して
私の秩父顛末記  北川清子……36

清風晶々  長嶺千晶……40

2014年5月5日月曜日

第8号発行

 季刊同人誌「晶」の第8号を発行致しました。目次は以下です。

●特集 金崎雅野 第二句集『こふのとり』鑑賞
本質を見抜く目   小川雪魚……1
通奏する温感    海野弘子……5
「こふのとり」跋  長嶺千晶……8

●同人俳句作品
草氷柱       長嶺千晶……10
銀の指輪      北川清子……11
二月嵐山法輪寺   小村一幸……12
初東風       清水睦子……13
秋冬        菅原久子……14
ふむふむ      永汐之恭……15
雪茜        峯岸八戒……16
鮟鱇        一柳はるみ…17
届きし初音     海野弘子……18
おでん酒      小川雪魚……19
山笑ふ       金崎雅野……20

●俳人協会授賞式に出席して
『今も沖には未来あり-中村草田男句集「長子」の世界』  海野弘子……21

本号の作品から  長嶺千晶……22

●エッセイ・評論
八戒のつぶやき(7)
浪江町のこと   峯岸八戒……24
イスラエル紀行(2)   長嶺千晶……26
俳論 中村草田男を想う
俳句で描いた昆虫記   金崎雅野……30
香西照雄著『中村草田男』の検証(8)
『火の島』に見る虚子選の巻頭句  長嶺千晶……34

清風晶々   長嶺千晶……36

「晶」会員の消息



2014年2月6日木曜日

ブログに紹介記事

涼野海音さんのブログに第7号の紹介記事が掲載されました。ありがとうございます。

2014年2月5日水曜日

第7号発行

 季刊同人誌「晶」の第7号を発行致しました。目次は以下です。

●特別寄稿作品(長嶺千晶句集『雁の雫』鑑賞)
季語の変貌    朝吹英和……1
新しき詩情    涼野海音……4

●同人俳句作品
霜夜       長嶺千晶……6
冬木の芽     金崎雅野……7
ボサノヴァ    北川清子……8
霜の声      小村一幸……9
銀河系      清水睦子……10
千の霊      永汐之恭……11
縄文人      峯岸八戒……12
鶏頭       一柳はるみ…13
晶らかに     海野弘子……14
放すのか     小川雪魚……15

本号の作品から  長嶺千晶……16

●エッセイ・評論
ひとりでは造れないもの   峯岸八戒……18
イスラエル紀行(1)   長嶺千晶……20
評論 優しいまなざし   金崎雅野……22
香西照雄著『中村草田男』の検証(7)
『火の島』に見る虚子選の巻頭句  長嶺千晶……26

清風晶々   長嶺千晶……28

「晶」会員の消息・基金深謝……表3

 

2013年11月11日月曜日

ブログにご高評

栗林浩さんのブログにて『今も沖には未来ありー中村草田男句集『長子』の世界』ご高評を頂きました。ありがとうございます。

2013年11月5日火曜日

第6号発行

  季刊同人誌「晶」の第6号を発行致しました。目次は以下です。

●特別寄稿作品
聴覚の人  飯島士朗……1
清風晶々   長嶺千晶……5

●同人俳句作品
風船葛      長嶺千晶……6
麦こがし     小川雪魚……7
秋薊       金崎雅野……8
ピアレアレンジ  北川清子……9
秋意       小村一幸……10
言の葉      清水睦子……11
レクイエム    永汐之恭……12
故郷       峯岸八戒……13
緑蔭       一柳はるみ…14
一語欲し     海野弘子……15
本号の作品から  長嶺千晶……16

●エッセイ・評論
童話  花音のみた夢   金崎雅野……18
ふるさと   峯岸八戒……22
香西照雄著『中村草田男』の検証(6)
藤村の詩を重ねた想い   長嶺千晶……24

「晶」会員の消息・基金深謝……28

2013年10月31日木曜日

今も沖には未来あり―中村草田男句集『長子』の世界

評論集『今も沖には未来あり―中村草田男句集『長子』の世界』を本阿弥書店より上梓いたしました。

自恃と自虐の交錯する青春時代を俳句によって超克し、俳句史上稀にみる生命鑽仰を高らかに詠いあげた中村草田男の原点を探る。第一句集『長子』全句の初出を完全網羅。そこから見えてくる草田男の真実とは? 

2013年9月11日水曜日

2013年8月31日土曜日

雁の雫

句集『雁の雫』を文学の森より上梓いたしました。

2013年8月5日月曜日

第5号発行

 季刊同人誌「晶」の第5号を発行致しました。目次は以下です。

●特別寄稿作品
草田男と霊感   恩田侑布子……1
奇蹟の變に招かれて   柚木紀子…8

●エッセイ
悟空、そして囲碁との出会   峯岸八戒……12

●同人俳句作品
南風      長嶺千晶……14
水無月の窓   海野弘子……15
初燕      小川雪魚……16
風薫る     金崎雅野……17
青葉五月    小村一幸……18
モーツァルト  清水睦子……19
遠嶺      永汐之恭……20
雪形      峯岸八戒……21
進級す     一柳はるみ……22

●評論
光と影と―二つのひろしま   金崎雅野……23
香西照雄著『中村草田男』の検証(5)
生命讃歌とは何か   長嶺千晶……28
本号の作品から  長嶺千晶……30

清風晶々   長嶺千晶……32

2013年7月10日水曜日

ブログに紹介記事

涼野海音さんのブログに第5号の紹介記事が掲載されました。ありがとうございます。

2013年5月5日日曜日

第4号発行

 季刊同人誌「晶」の第4号を発行致しました。目次は以下です。 

●同人俳句作品
影の春      長嶺千晶……1
寒明ける     一柳はるみ…2
薔薇色の舌    海野弘子……3
揚雲雀      小川雪魚……4
梅一輪      金崎雅野……5
浅春の寒     小村一幸……6
己が影      永汐之恭……7
処女雪      峯岸八戒……8
本号の作品から  長嶺千晶……9

●特別寄稿作品
龍太と蛇笏が求めたもの②  三森鉄治……12

●エッセイ・評論
日刊学級通信のこと   峯岸八戒……16
道の辺の草によせて   金崎雅野……18
香西照雄著『中村草田男』の検証(4)
死に打ち勝つ俳句   長嶺千晶……22

清風晶々   長嶺千晶……24

2013年4月13日土曜日

ブログに紹介記事

涼野海音さんのブログに第4号の紹介記事が掲載されました。ありがとうございます。

2013年2月8日金曜日

BLOG俳句新空間に紹介記事

BLOG俳句新空間筑紫磐井さんによる第3号の紹介記事が掲載されました。ありがとうございます。

2013年2月5日火曜日

第3号発行



季刊同人誌「晶」の第3号を発行致しました。目次は以下です。

●特別寄稿
龍太と蛇笏が求めたもの①
          三森鉄治……1
●同人俳句作品
鍵さまざま     長嶺千晶……4
折れ合ふ      峯岸八戒……5
オペラ「トスカ」  海野弘子……6
冬の燭       小川雪魚……7
大鳥居(宮島)   金崎雅野……8
残像        永汐之恭……9
本号の作品から   長嶺千晶……10     

●エッセイ
八戒のつぶやき(2
ゆっくり漬け込む  峯岸八戒……12

●評論
俳人のスランプ対策 小川雪魚……14
中村草田男を想う
インバネスと林檎  金崎雅野……18
香西照雄著『中村草田男』の検証(3)
聖パウロ教会にて   長嶺千晶……32

清風晶々       長嶺千晶……24

2012年11月6日火曜日

ブログに紹介記事

涼野海音さんのブログに第2号の紹介記事が掲載されました。ありがとうございます。

2012年11月5日月曜日

第2号発行

 季刊同人誌「晶」の第2号を発行致しました。目次は以下です。

●同人俳句作品
白い時間  長嶺千晶
夏雲    永汐之恭
間合ひ   峯岸八戒
火縄の香  小川雪魚
夏帽子   金崎雅野


本号の作品から  長嶺千晶


●特別寄稿
俳句の批評という冒険 境野大波

●寄稿草田男研究
魂の同伴者 小山森生

珠玉のメルヘン
雉鳩になったおばあちゃん 峯岸八戒


八戒のつぶやき
日野原重明先生に伺う 金崎雅野

 香西照雄著『中村草田男』の検証(2)
『長子』から『火の島』 長嶺千晶 

清風晶々 長嶺千晶

見本誌(1部千円)のお申込は下記までお願いします。
muranochiaki
の後にアットマークとpure.ocn.ne.jp

2012年8月19日日曜日

週刊俳句に紹介記事

週刊俳句で、三島ゆかりさんの「中村草田男研究誌の誕生 季刊同人誌『晶』創刊号を読むという記事により紹介されました。ありがとうございます

2012年8月14日火曜日

2012年8月5日日曜日

創刊号発行

 季刊同人誌「晶」の創刊号を発行致しました。目次は以下です。

創刊に際して 長嶺千晶

●創刊特別寄稿
「晶」創刊祝句 岩淵喜代子
晶」創刊巻頭提言 韻文と散文の間 村上 護

●同人俳句作品
大きな瞳  金崎雅野
虚空    永汐之恭
満ちゆける 長嶺千晶
伏流    峯岸八戒

●創刊特別寄稿
俳句作家へのアプローチ 栗林 浩
『高浜虚子論』の場合 俳人研究の一試み 中岡毅雄

●同人評論
中村草田男を想う 一匹の羊  金崎雅野
創刊号の作品から  長嶺千晶
 香西照雄著『中村草田男』の検証(1)
草田男はヒューマニストだったのか? 長嶺千晶 

清風晶々 長嶺千晶

見本誌(1部千円)のお申込は下記までお願いします。
muranochiaki
の後にアットマークとpure.ocn.ne.jp

2012年7月19日木曜日

十年の歳月を経て

このたび第四十一回俳人協会賞を受賞された茨木和生氏の第七句集『往馬』(いこま)が、俳句四季文庫の新装版で上梓された。

句集を出すことには、さまざまな考え方があると思う。一生に一回、自分史の記念として出すのであれば、装丁を凝った化粧箱入りのようなものは望ましいし、また一方、文庫本サイズというのは持ち歩く便利さもあり、手にとって広く読んでもらうには好都合である。今回の「あとがき」にもあったが、句集というのは概して著者の手元に残らないものなのである。良いものを残していくためにも、文庫本として再度上梓されていくことは、意義深いことと思う。

 たまたま『往馬』は平成13年俳人協会賞受賞当時、単行本のかたちのものをご恵贈いただいていたこともあり、今、十年を経て読み直す機会をいただいたことは得難い経験であった。

 当時の私の中に一番心に残った句は、

こがねうちのべたるごときこのこかな   という句であった。

たまたま友人たちとの秋田の吟行旅行で、当時、「このこ」なるものの実物を見ていた。「このこ」とは、海鼠の卵巣を三角形に伸ばして、乾かしたもので、珍味中の珍味である。珍味というのは貴重であるから、値段も恐ろしく高い。一辺が十センチくらいの三角形の大きさのものが、当時でも数万円はしたと思う。金色に干されているこのこを見るとまさに、「こがねうちのべたるごとき」である。
さらにこの句の凝っているところは、芭蕉に一句一章の句をたとえて「こがねうちのべたるやうに」と言う言葉があるのだ。それを踏まえての句なのである。そして紛れも無く、この句は「このこ」の一句一章の句である。そんな茨木和生氏の遊びごころを感じて、当時、心に残った一句であった。

 俳壇きってのグルメでもある、茨木和生氏の一面はこの句にも集約されているが、今回読み直して思ったのは、茨木氏の負っている風土と、その故郷への想いである。東京に生まれ育った私には、見当がつかなかった事柄が、この十年を経て理解できるようになってきた気がする。氏は集名の『往馬』(いこま)からもわかるように、幼少期から生駒山を眺めて育った。現在も平群という深吉野の地に住まわれている。
 今回、特に心惹かれた句をあげてみたい。

   雪漕ぎをして業平の墓に行く
   一本の針金なりし貂の罠
   ゐずなりし蚕飼疲れを知る人も
   濃き墨はひかりて乾き雲の峰
   蹴り脚の伸びすこやかな鹿の仔かな
   尻子玉抜かれしごとき水中り
   熊の糞崩れてゐたる雪間かな
   罠づくり伝授してをる春炉かな
   しぶちんといはるるは癪祭来る
   井戸替の痩鯉を投げ上げにけり
   海豚とは知らせてをらず薬喰

 十年前の私には、これらの句の諧謔味は理解できなかった。土に根ざし、生きることの、野太さは自分とは無縁ものものだと思っていた。しかし、今になって俳句の世界の中だけに忘れられてはいけない深吉野の風土のもつ力を、いきいきと善も悪もすべてをひっくるめたふところの深さを、この句集に感じはじめている。歳月を経て同じ句集を読み直すことで、気づくのは新たな自分なのかもしれない。そんな貴重なひとときをいただいた。

2012年7月17日火曜日

晶メール句会7月の作品から考える


 「晶」では会員が全国に散らばっているので、定例句会を月一回15日締切のメール句会にしています。7句投句、7句選句にコメントをつけて、投句者同士が全員にメールで送りあい、最後に長嶺が集計して、結果をメール送付しています。ご興味のある方は、長嶺までお問い合わせください。次回の7句投句は、8月15日締切です。

 このメール句会も早や、3回たちました。今回から、気になった句とこうしたらどうだろうかという提案をこのブログでしていきたいと思います。あくまでご参考にと思っていますが、どうかご一緒に考えてみてください。

夫出かけ真昼の贅沢髪洗ふ

この句は、何となく自由を得て、のびのびとした妻の心境が良く出ていると思います。夫が現役を離れ、自宅に四六時中いられると落ち着かないのは、世の妻の常でしょう。
そんな妻の気持ちが素直に表れています。

しかし、俳句では、なるべく動詞を使わずに、コンパクトに表現することが必要です。一句の中には動詞が二つ以上はない方がいいという人もいます。なぜかと言えば、動詞を数多く使うことによって、表現が散文的、説明的になる恐れがあるのです。あくまで、
俳句は韻文の詩であってほしいのです。ですから、「晶」では基本的に、有季定型を守り、
歴史的仮名遣いで俳句を作っていきます。

具体的に云うと「夫出かけ」と「髪洗ふ」で動詞が二つになっています。もちろん「髪洗ふ」は季語ですので、はずせません。そうすると「夫出かけ」の「出かけ」の表現を変えられないでしょうか。

 「夫でかけ」は夫が居ないということ、つまり留守なのです。「夫留守の」としたら
どうでしょう。さらに定型は十七音ですから、「真昼の贅沢」では中7が八文字になって
しまいます。真昼のの「真」は必要でしょうか。「昼の贅沢」ではどうでしょう。

 さらに「真昼」を活かすなら、「贅沢」を「贅」に切れ字の「や」をつけて「贅や」ということで、ゴージャスな気分が伝わります。このようにして、韻文的に言葉を詰めた表現を考えていくのです。
 
 「夫留守の昼の贅沢髪洗ふ」  または  「夫留守の真昼の贅や髪洗ふ

私だったら、一歩すすめて「夫留守の真昼の奢り髪洗ふ」としますが、これは行き過ぎでしょうか。こんなことを参考にして、もう一度考えてみてください。内容はとても実感があって良い句だと思います。

撫でて買ふ小玉西瓜は子の頭ほど

店頭の小玉西瓜が子の頭ほどの大きさでかわいらしかったので、触ってはいけない西瓜を子の頭のように思わす撫でて買ってしまったということなのでしょう。この句は十分に
形もできていますし、状況も伝わります。

しかし、撫でて買ふという表現にも動詞が二つあります。さらに、子の頭を「あたま」ではなく「ず」と読ませて定型にしていることに、注意が必要です。結社によっては許されるかもしれませんが、一般的に通じるとは言えません。これを「子のあたまほど」と読ませて定型にする方法を考えてみましょう。

 「子の頭(あたま)ほどの西瓜や撫でて買ひ」としても 小玉西瓜であることは伝わるのではないでしょうか。撫でて買うという動詞二つが、うるさいと思えば、

「子の頭ほどの西瓜よ撫でやりぬ」で、それが店頭でも、畑でも場所の設定はOKになります。この添削した二句はあまり、上手な例とはいえませんが、必要なことの焦点を絞っていくことが、省略を効かせる表現の基本です。一から十まで云わないで一句に仕立てていく方法がないかどうかを考えてみてください。

自分が感動した焦点がどこか、それを自分でつきつめていくことによって、省略を効かせた表現が可能になります。

磯しぶき虹の断片出ては消え

荒磯へ波しぶきがかかる度に虹の断片があらわれ、そして消えるのでしょう。とても
鮮明に情景がわかります。問題は「出ては消え」がまた動詞が多いことです。この句のかたちも一句としては整っているのですが、あえて言えば私なら、次のようにするだろうと思います。どうか考えてみてください。
 
飛沫くたび虹の断片荒磯岩」 さらに切れ字を使い「飛沫くたび虹のかけらや荒磯岩

 庭園の岩尖りゆく日の盛り

あまりにも厳しい暑さのなかに、庭園の岩が尖ってみえたようだという感覚なのでしょう。しかし、「庭園の岩」とすると、「岩」の説明にならないでしょうか。

庭園に岩尖りゆく日の盛り」とすると庭園という空間の中に岩々が尖っていく様子が
浮かぶのではないでしょうか。「の」と「に」の助詞の違いですが、意味が変わってくることがわかるでしょうか。この「庭園に」としても「に」がそもそも場所をあらわす助詞なので、まだまだ、説明的ですが、「庭園の岩」としてしまうと、これは本当に岩がある場所説明をしているだけのことになります。

俳句は最後は助詞できまります。一字たりともおろそかにしない句作をこころがけたいものです。


2012年5月21日月曜日

5月の受贈誌より(1)

感銘句より一部を抽かせていただきました。誠にありがとうございました。
(到着順で敬称は略させていただきました。)

     
狩     いくたびも逸るを怺へ巣立鳥       鷹羽 狩行
      一頭の駈け抜けてゆく落花かな      片山由美子
      初富士の白磁を太平洋の上        田口 紅子
 
百磴    梅の香と気付きしほどの雨が降る     雨宮きぬよ

秋草    家中に箱がたくさん鳥の恋        山口 昭男

若竹    寒月下われも笛吹童子かな        加古 宗也

ひろそ火  薔薇の芽や神にも赤き血のありぬ     木暮陶句郎

都市    義仲を育てし谷や雪煙          中西 夕紀

春塘    豆撒きて三尋の闇をてなづける      清水 和代

帆     草鉄砲たれに飛ばそか雲雀東風      浅井 民子

松の花   はばたきて大白鳥の仁王立ち       松尾 隆信
 
青瓢    雪原や影無き鳥の声過ぎる        中村  弘
      遷化の師乗る雲も無し冬満月       加藤  仁

陸     谷底の巌は割れて桜咲く         中村 和弘

       八田木枯先生
秋麗    生まれ変はられしか若き糸桜       藤田 直子

夕凪    鬨の声消して吹雪の関ヶ原        飯野 幸雄

大     春遠き坂の日向の蕗の薹         境野 大波
      雪吊や今宵は月の欠けるてふ       遠藤千鶴羽

紫     みな同じ貌ではないと泣く公魚      山﨑 十生

星雲    補陀落の沖に溢るる冬銀河        鳥井 保和

握手    ゴンドラや我が青春の標旗なり      磯貝碧蹄館
      穀象や秘すれば花の教へあり       朝吹 英和
      この国の震へし春を踏み違ふ       海野 弘子

弦     電灯の紐ながく引く鶴来るころ      遠山 陽子

吟遊    書類ただ上下している空虚な塔      夏石 番矢
      弓に矢をつがえよ永遠を射ぬかん     鎌倉 佐弓

ランブル  春愁のなかに浮くもの沈むもの      上田日差子

篠     歩く人皆春光の塵となり         岡田 史乃
      良縁を願ふ母の手雛飾る         辻村 麻乃

宇宙    神鏡のごとき一湾初御空         島村  正
      桜桃忌昨日の吾にグッド・バイ      八木 裕子

嘉祥    方丈に鈴の音したる涅槃かな       石嶌  岳   

谺     草青むキリストは立ち釈迦坐り      山本 一歩

椰子通信  亡きひとの家路は芹の水に沿ひ      友岡 子郷
      海見たき日は海を見に龍の玉       中岡 毅雄

や     いつかのセーター綾取りの川となり    麻里伊
      
かつしか  三角の鉄砲狭間風光る          吉岡 桂六

OPUS  村中を知つてゐるなり麦を踏む      和田耕三郎
      遠景にずつと塔ある遅日かな       坂本  登
      毛糸玉ころげてここも銀河系       しなだしん
 
なんぢや  手を繋ぐひとと一緒に冬に入る      井関 雅吉
      春節の街の夕ぐれ茶葉ひらく       鈴木 不意
      獅子舞に惡しき頭を噛ませをり      土岐 光一

静かな場所 使はれぬもの裏庭に枇杷の花       対中いずみ
      梅漬けて貴女は去年より若し       満田 春日

唐変木   銀色の月を大きく秋草図         菊田 一平

麻     残る鴨見ていてひとり残さるる      嶋田 麻紀
      剪定の枝をその樹に束ね置く       松浦 敬親

豆の木   
      半袖になりはじめたる心かな       こしのゆみこ
雑巾で行こう隅々まで如月         遠藤  治
待針をマチコと呼ぶも供養なる       太田うさぎ
空瓶をくぐつてきたる冬日かな       齋藤朝比古
ふくろふの眼うごかず闇うごく       吉田 悦花   

惜春    新涼や蔵ある家もなき家も         高田風人子
      枯木径行くや何かに縋りたく        福神 規子