2012年7月17日火曜日

晶メール句会7月の作品から考える


 「晶」では会員が全国に散らばっているので、定例句会を月一回15日締切のメール句会にしています。7句投句、7句選句にコメントをつけて、投句者同士が全員にメールで送りあい、最後に長嶺が集計して、結果をメール送付しています。ご興味のある方は、長嶺までお問い合わせください。次回の7句投句は、8月15日締切です。

 このメール句会も早や、3回たちました。今回から、気になった句とこうしたらどうだろうかという提案をこのブログでしていきたいと思います。あくまでご参考にと思っていますが、どうかご一緒に考えてみてください。

夫出かけ真昼の贅沢髪洗ふ

この句は、何となく自由を得て、のびのびとした妻の心境が良く出ていると思います。夫が現役を離れ、自宅に四六時中いられると落ち着かないのは、世の妻の常でしょう。
そんな妻の気持ちが素直に表れています。

しかし、俳句では、なるべく動詞を使わずに、コンパクトに表現することが必要です。一句の中には動詞が二つ以上はない方がいいという人もいます。なぜかと言えば、動詞を数多く使うことによって、表現が散文的、説明的になる恐れがあるのです。あくまで、
俳句は韻文の詩であってほしいのです。ですから、「晶」では基本的に、有季定型を守り、
歴史的仮名遣いで俳句を作っていきます。

具体的に云うと「夫出かけ」と「髪洗ふ」で動詞が二つになっています。もちろん「髪洗ふ」は季語ですので、はずせません。そうすると「夫出かけ」の「出かけ」の表現を変えられないでしょうか。

 「夫でかけ」は夫が居ないということ、つまり留守なのです。「夫留守の」としたら
どうでしょう。さらに定型は十七音ですから、「真昼の贅沢」では中7が八文字になって
しまいます。真昼のの「真」は必要でしょうか。「昼の贅沢」ではどうでしょう。

 さらに「真昼」を活かすなら、「贅沢」を「贅」に切れ字の「や」をつけて「贅や」ということで、ゴージャスな気分が伝わります。このようにして、韻文的に言葉を詰めた表現を考えていくのです。
 
 「夫留守の昼の贅沢髪洗ふ」  または  「夫留守の真昼の贅や髪洗ふ

私だったら、一歩すすめて「夫留守の真昼の奢り髪洗ふ」としますが、これは行き過ぎでしょうか。こんなことを参考にして、もう一度考えてみてください。内容はとても実感があって良い句だと思います。

撫でて買ふ小玉西瓜は子の頭ほど

店頭の小玉西瓜が子の頭ほどの大きさでかわいらしかったので、触ってはいけない西瓜を子の頭のように思わす撫でて買ってしまったということなのでしょう。この句は十分に
形もできていますし、状況も伝わります。

しかし、撫でて買ふという表現にも動詞が二つあります。さらに、子の頭を「あたま」ではなく「ず」と読ませて定型にしていることに、注意が必要です。結社によっては許されるかもしれませんが、一般的に通じるとは言えません。これを「子のあたまほど」と読ませて定型にする方法を考えてみましょう。

 「子の頭(あたま)ほどの西瓜や撫でて買ひ」としても 小玉西瓜であることは伝わるのではないでしょうか。撫でて買うという動詞二つが、うるさいと思えば、

「子の頭ほどの西瓜よ撫でやりぬ」で、それが店頭でも、畑でも場所の設定はOKになります。この添削した二句はあまり、上手な例とはいえませんが、必要なことの焦点を絞っていくことが、省略を効かせる表現の基本です。一から十まで云わないで一句に仕立てていく方法がないかどうかを考えてみてください。

自分が感動した焦点がどこか、それを自分でつきつめていくことによって、省略を効かせた表現が可能になります。

磯しぶき虹の断片出ては消え

荒磯へ波しぶきがかかる度に虹の断片があらわれ、そして消えるのでしょう。とても
鮮明に情景がわかります。問題は「出ては消え」がまた動詞が多いことです。この句のかたちも一句としては整っているのですが、あえて言えば私なら、次のようにするだろうと思います。どうか考えてみてください。
 
飛沫くたび虹の断片荒磯岩」 さらに切れ字を使い「飛沫くたび虹のかけらや荒磯岩

 庭園の岩尖りゆく日の盛り

あまりにも厳しい暑さのなかに、庭園の岩が尖ってみえたようだという感覚なのでしょう。しかし、「庭園の岩」とすると、「岩」の説明にならないでしょうか。

庭園に岩尖りゆく日の盛り」とすると庭園という空間の中に岩々が尖っていく様子が
浮かぶのではないでしょうか。「の」と「に」の助詞の違いですが、意味が変わってくることがわかるでしょうか。この「庭園に」としても「に」がそもそも場所をあらわす助詞なので、まだまだ、説明的ですが、「庭園の岩」としてしまうと、これは本当に岩がある場所説明をしているだけのことになります。

俳句は最後は助詞できまります。一字たりともおろそかにしない句作をこころがけたいものです。


1 件のコメント:

  1. 三島ゆかり2012年7月19日 20:52

    添削というと秋元不死男『俳句入門』(角川選書)の「俳句をつくる態度」という章で、草田男の句を題材に6つの改作を並べた名文を思い出さずにはいられません。

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